ライステラスの家 RICE TERRACE NO IE
岡山県浅口市 2019年
250年ものあいだ棚田だった土地の記憶を追想し、風景を再現した住宅。段状の石積みの上に、キチジョウソウを茂らせ棚田に見立て、その上に暮らすという敷地の歴史に敬意を払う建ち方です。外構や室内には杉の角材の角を活かした用い方をし、陰影がもたらす新鮮な意匠を生み出しています。素朴な佇まいと、高密度なディティールで、懐かしくも新しい世界観を描いています。緩やかに弧を描く棚田の石垣は、室内にまで侵入して、元々あったかのような高低差が日常生活の動線にも変化を与える豊かなシークエンスの住宅です。
角張った角地の擁壁を撤去して、緩やかなカーブの棚田に見立てた外構。切り妻屋根と焼杉の外観はこの地域によく見られる外観です。角にあたる部分は平屋にして、街に対してひっそりとした佇まいを醸し出しています。
棚田の内側にあたる中庭も高低差を利用したベンチやデッキなどの居場所が随所に設けられています。
道路からの視線とも高さが違うので干渉されずに家族だけの時間を楽しむことができます。
デッキはリビングと同じ高さで、テレビ台の高さの窓台には内外から腰掛けることができ、
植え込みに足を入れて腰掛けると街との関係は分断されてプライバシーが確保されます。
ダイニングは庭のテラスと全面開口の引き戸で繋がり、開け放すと庭と一体化します。
歩みをすすめると、一段下がったタイル貼りのファイヤープレースがあり、その先の棚田の段差を上がったような位置にリビングがあります。ファイヤープレースはダイニングの前のテラスと同じ高さになっていて、生活動線が屋内外を行き来するような感覚になります。
リビングの壁と天井は100㎜角の杉の角材を角度を変えながら並べた造形で陰影が美しい空間です。